小さい頃、お墓が嫌いでした。 冷たい黒い石がたくさん並んでいる光景もなんだか陰気で嫌でしたし、「そこに死者(の骨)が眠っている」ということに対する言い知れぬ恐怖感があったからです。 けど不思議なもので、家族を何人か見送り、大人になると、お墓というものが自分にとって少し子供のころとは違った意味を持つ場所になってきた気がします。 ドラマや映画なんかで見た、「お墓で手を合わせて近況を報告する」「故人の好きだった食べ物やお酒をお供えする」という行為も、子供の頃には「なんの意味があるの?」「もう死んでるのに」くらいに思っていましたが、気づけばそれらを行なっている自分がいます。 うまく言えませんが、「いなくなってしまったけど、まだいると思いたい」というような気持ちがあって、それを繋げるのがお墓という場所だと思うんです。なんといってもそこに骨がありますから。 お墓を綺麗に掃除して、手を合わせて近況報告をする。なんだか気が引き締まって、「ご先祖に恥ずかしくない生活をしなければ」なんて背筋が伸びます。 |